2021年6月27日日曜日

2021.6.27 VOA Learning Englishを用いた 簡易e-Learning教材開発と授業実践事例

2021.6.27 に外国語教育メディア学会関西支部春季研究大会にて、標記の口頭発表(実践報告)を同僚の久田歩先生と共同で行います。

発表要項はこちらの5ページ目にありますが、以下にも掲載しておきます。

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1. 概要

筆者らはVOA Learning Englishを利用した簡易e-Learning教材を2020年8月に企画し、LEVOAと称する教材開発研究チームを立ち上げ、その成果を https://sites.google.com/view/voaleaningenglish/ にて無料公開している。ここではリスニング中心の学習に主眼をおき、各自のレベルにあった学習を狙っている。

具体的には 3 種類のスクリプト(英和併記、和訳のみ、英文のみ)を参照しながら当該範囲の音声を聴く活動から始めるが、さまざまな練習メニューを用意し、1 つの教材をさまざまな練習に使えるように工夫している。

LEVOA で開発している簡易 e-Learning 教材は本文からチャンクを抜き出すもので、1 本の記事から 70〜80 箇所程度のチャンクを、それらの語数を手がかりに回答させるという内容で、Excel の関数式を利用し、非表示行に収めている正解と一致するかどうかを判定するという設計になっている。

2. 授業実践事例と課題評価の方法

参加者は大阪市内の大学 1 年次 176 名(再履修者含む)で、科目名は受信英語 I である。通常は毎年度 44 名程度ずつを 2 名 2 コマの教員で担当するが、2021 年前期の 14 回の授業は 2 名の教員で 1 コマを担当する合同開講とし、前半・後半で授業担当・課題採点担当を交代する形で実施している。授業では読解の要領などについてオンライン同時配信し、事後に録画も学内限定で公開している。

問題となるのは、新型コロナ禍で試験が実施できないことによる課題での評価である。これまでに様々な工夫を行ってきたが、2021 年度前期は毎回の出席確認問題 2 点、提出物課題 4 点の蓄積に加え、学期中に提出させる簡易 e-Learning教材ファイル4本8点分、ALC NetAcademyの進捗度10点分で、102点満点を100点打ち切りとし、そのまま成績点とする旨を授業初回の配布文書に記載している。

3. 考察

本来の狙いとしては受信中心で進めるべきところ、その理解度の測定において、チャンクの入力や、英文の分析を書かせる形で評価することが適切であるかどうか悩ましいところである。オンライン授業の限界を考慮するとやむを得ないが、テスティング分野における先行研究なども参照すべきであろう。

参考文献

神谷健一. (2021). 音声つきパブリックドメイン記事を利用したリスニング中心のオンライン英語学習教材の開発, e-Learning 教育学会第 19 回研究大会. https://kmyken1.blogspot.com/2021/03/2021321-e-learning.html

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公式の発表要項集では参考文献へのリンクURLが途中で切れてしまっているのが残念ですが、上記では修正しておきました。このブログの過去記事です。

さて、この発表は諸事情により授業開始4回目の時点で7回目までを見据えた形の応募になってしまいました。無事に採択され、7回目にアンケートを取ることができ、このアンケートからも一定の傾向を読み取ることができたので一安心しているところですが、今後もいろいろと検討すべきことがありそうです。

当日のスライドはこちらです。

2021年6月11日金曜日

2021.6.12 無料ソフトを利用して学生の録音音声に模範音声を挟み込む方法 -外国語の授業を想定して-

2021.6.12 に Zoom で標記の無料オンラインセミナーを実施します。大阪府立大学の清原文代先生にお招きいただきました。

イベント紹介ページはこちらです。

このオンラインセミナーでは無料ソフト Audacity と、Audacity に組み込んで使う FFmpeg を紹介したのち、以下の3点を目標に進めていきます。

  • サウンドファイルの切り貼りによる教材加工
  • 足りない問題番号を教員自身で録音して(もしくは合成音声で)追加
  • 学生の録音音声に模範音声や解説を挟み込む

資料はこちらからダウンロードいただけます。

なお、サウンドファイルの編集の基本については、2020.11.3 のセミナーの動画を先にご覧ください。

このセミナー動画も後日公開予定です。

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2021.6.15 追記 当日の動画ができあがりました。こちらからご覧いただけます。

2021年3月17日水曜日

2021.3.21 e-Learning教育学会で口頭発表を行います。

2021年3月21日にオンラインで実施される e-Learning教育学会 で口頭発表します。(会員・非会員を問わず参加は無料ですが、事前の申し込みが必要です。)

タイトルは「音声つきパブリックドメイン記事を利用したリスニング中心のオンライン英語学習教材の開発」という42文字もの長さです。今回は開発報告であり、まだ授業実践は行っていませんが、2021年4月からの授業で実際に使ってみます。

2020年8月からVOA Learning Englishを利用した「VOA Learning English で学ぼう!」( https://sites.google.com/view/voaleaningenglish/ )  というサイトを協力者7名とともに作成してきました。この教材のうちの4課分を2021年度前期に、4課分を2021年度後期に、それぞれ1年次の学生を対象とする授業で利用する計画で進めています。

今回は設計の背景に当たる部分ですので、発案者である私が一人で発表します。

以下、プログラムに掲載している発表の概要です。

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本発表ではリスニングを出発点とし、リーディング、ライティング、リップシンク、マンブリング、オーバーラッピング、シャドウイング、スピーキングと段階的に順を追って学習を進めていく「VOA Learning English で学ぼう!」( https://sites.google.com/view/voaleaningenglish/ ) について、現状と今後の課題について紹介する。この学習教材の開発の目標は学習者自身が「英語で表現できるようになったら嬉しい」と感じる表現を段階的かつ大量に学習させることである。

このサイトは2020年8月より発表者が中心となって開発・運営しているものである。本教材では和訳を提供しており、和訳を使いながら音源を何度も聴くところから学習を開始する。詳細は上記サイトに譲るが、いずれの Unit においても 記事ウェブページ / 文ごとの和訳 / 全体の和訳 / 番号つき英文 / Words & Chunks / Words & Chunks の答え / 音源 / Quizlet から構成されている。主たる学習教材である Words & Chunks は Excel のワークシートであり、番号つき英文を参照しながら指定された語数で回答を入力すると、組み込まれた関数式により即座に正解・不正解が表示されるようになっている。基本的には個別学習であり、授業を複線化することができるように設計しているが、教員の役割も様々な場面で見出すことができる。

早急に検討しなくてはならない課題として、授業での成績をどのように評価するかという点が残されている。方向性としては何らかのアンケートシステムを利用し、Words & Chunks を英文から抜き出すという主教材に沿った内容が中心になると考えているが、他にも聴こえた内容の和訳を入力させるというような形での出題も可能であろう。

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私の勤務校は2021年度からは対面授業に戻す予定になっていますが、何らかの理由でオンラインで受講する学生も少なくないと踏んでいます。つまりハイフレックス型の形態での実施となることが予想されます。場合によっては新型コロナ禍が再度大流行してキャンパス閉鎖なんてことがないとも限りませんので、上記の最終段落にある評価方法についてはまだ少々悩むところですが、いきなり「期末テスト中止!」となっても対応できるように、毎回ポイントを貯めていく形の成績評価方法を考えました。

まあ本来は自習用のコンテンツとして開発しているのですが、自習するにはちょっとレベルが高いので、ファシリテートするという感じの授業になるかと思います。まだ始まっていないのでなんとも言えないのですが。

発表予定の内容をスライドにまとめました。当日まではいろいろ修正すると思います。

可能であれば当日の動画も後日こちらで公開する予定です。

2021年3月8日月曜日

2021.3.13 映像メディア英語教育学会西日本支部大会で口頭発表を行います。

2021.3.17追記:当日の発表動画を公開します。

https://youtu.be/zZ_fRpRflOk

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標記の学会で『半期で6本の映画を丸ごとみせる授業の内容と工夫―2019年度以前と2020年度を比べながら―』というタイトルの実践報告を行います。

オンラインで実施され、参加は無料です。

ご関心のおありの方は http://atem.org/nishinihon/2021/02/03/587/ からお申し込みください。http://atem.org/nishinihon/2021/02/01/580/ にプログラム・発表概要があります。

私の発表内容は以下の通りです。作品名の後には公開年のほか、Internet Movie Database(Trivia / Goofs 出典)、Wikipedia英語版(Plot出典)へのリンクを貼っておきます。ただし2018年度に資料を作成した時点から変更されている可能性もあります。

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半期で 6 本の映画を丸ごと見せる授業の内容と工夫 

―2019 年度以前と 2020 年度を比べながら―

神谷健一(大阪工業大学)

この授業は発表者自身が担当する、学部2年次学生の英語力強化を目的として開講されている半期完結の少人数ゼミ2科目のうちの1科目である。2019年度前期は2名、後期は5名、2020年度前期は6名、後期は8名の受講生が当ゼミに配属されている。使用する作品は『となりのトトロ』(1988・iMDbWikipedia)、『ノッティングヒルの恋人』(1999・iMDbWikipedia)、『プラダを着た悪魔』(2006・iMDbWikipedia)、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997・iMDbWikipedia)、『エリン・ブロコビッチ』(2000・iMDbWikipedia)、『トゥルーマン・ショー』(1998・iMDbWikipedia)であった。2020年度前期は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)の代わりに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985・iMDbWikipedia)を学生の希望により英語音声・英語字幕で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2』(1989)と『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 3』(1990)を英語音声・日本語字幕で視聴させた。(同学期は毎学期2回程度実施される集合ゼミが新型コロナ禍の影響で中止になったため8本の作品を視聴させた。)

この授業では基本的には2週を1セットとして英語音声・日本語字幕による「映画の全編視聴」と「その映画に関する学習」を繰り返している。映画を全編視聴させる理由は単純で、その方が学生たちも楽しめるからである。勤務校は1コマ100分授業ではあるが、それでも長い映画作品は途中で分割しなければ映画全体を視聴させることができない。しかし3限に開講されている利点を生かし、映画視聴の週は分割しなくても全体を視聴できるよう、昼食持ち込みで昼休みから開始している。映画終了後にはInternet Movie Database (http://imdb.com/) から各映画作品についての Trivia と Goofs を、また Wikipedia から Plot の部分をA4両面1枚にまとめ、宿題として翌週までに読んでくるよう指示する。

学習の週では必要に応じて映画と比較しながら、前週に渡したプリントのTriviaとGoofsを一人ずつ当てて和訳させる。Plotについては前週の映画視聴があるため大まかには把握できているところが多いが、うまく訳すことができなかった部分(主に文法上の理由)について学生に質問させ、それに教員が答えるという形で実施している。その後で「英語の音の変化」「主題歌のこなれた日本語訳を英語の歌詞と比較する」「主題歌を使ったディクテーション」「主題歌に見られる脚韻」「脚本のある台詞と自発的な発話の違い」「口語英語の特徴」「印象的なセリフの暗唱」などのトピックから1つ〜2つを選んで実施している。

当日には全資料をダウンロードできるサイトを用意する。忌憚のないご意見を伺いたい。

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以下、この授業で使った全ての資料です。一部を除き、再利用しやすいようにWordファイルで提供します。
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<発表用スライド>
<シラバス補足事項>
<となりのトトロ> 主な学習内容:英語の音変化・リズム

  1. 映画視聴後に配布するもの(翌週までの課題)
  2. 英語の音変化・リズムを理解する、英訳歌詞と原曲歌詞の比較、英訳歌詞(一部)を使った穴埋め
  3. エンディングテーマ英訳歌詞(2.の答え合わせ)
  4. 翌週までの課題(原曲通りに訳されている部分、原曲通りに訳されていない部分を考察)

<ノッティングヒルの恋人> 主な学習内容:歌詞の意訳・英語歌詞の聞き取り・脚韻

  1. 映画視聴後に配布するもの(翌週までの課題)
  2. 対訳を見ながら曲を聞いてみよう
  3. グループ活動 対訳を参考に歌詞穴埋め 
  4. 3.の答え合わせ/音の連結
  5. 翌週までの課題(原曲通りに訳されている部分、原曲通りに訳されていない部分を考察)

<プラダを着た悪魔> 主な学習内容:名前の付加

  1. 映画上映後に配布するもの(翌週までの課題)
  2. 悪魔英語講座
  3. 名前が付加されている箇所をスクリプトから抽出
  4. 会話における名前の付加 -日英対照研究-(神谷, 2006)
  5. シャドーイングを日本語でやってみよう(翌週までの課題)

<グッド・ウィル・ハンティング> 主な学習内容:印象的なセリフの暗唱

  1. 映画上映後に配布するもの(翌週までの課題)
  2. 口頭練習したいフレーズ(翌週までの課題なし)

<エリン・ブロコビッチ> 主な学習内容:印象的なセリフの暗唱

  1. 映画上映後に配布するもの(翌週までの課題)
  2. 口頭練習したいフレーズ(翌週までの課題なし)

<トゥルーマン・ショー> (回数調整用)

  1. 映画上映後に配布するもの(自由課題)
  2. 口頭練習したいフレーズ(自由課題)

<バック・トゥ・ザ・フューチャー> (回数調整用)

  1. 映画上映後に配布するもの(自由課題)

<参考資料:拙いものですが、名前の付加に関する修士論文へのリンクも貼っておきます。>