2020年12月3日木曜日

2020.12.5 JAAL-in-JACET で授業実践を発表しました。

標記の大会で「授業の複線化のための2つの試み」というタイトルの実践報告を行いました。内容は授業で利用している「授業内ラーニングポートフォリオ」と「Phrase Reading Worksheet」についてです。

もともと2020年3月にとある小規模の研究会で「教室内学力格差の解消に向けた3つの取り組み」として発表する予定だったネタで、来聴者とのやり取りを踏まえて考えをまとめ直したものを2020年8月に発表する予定だったのですが、どちらの発表機会も新型コロナ禍の影響で失われてしまいました。

しかもオンライン授業になり、授業内ラーニングポートフォリオもPhrase Reading Worksheetも2020年度はほとんど使えていません。

8月の大会の代替としてJAAL-in-JACETでオンライン発表できる機会を与えてもらったのですが、何となく生煮えの感が残ります。3月の研究会が飛んだのはちょっと残念でした。

言い訳はともかくとして、今回の発表で使う資料を公開しておきます。

授業内ラーニングポートフォリオのサンプルはこちらです。
Phrase Reading Worksheet のサンプルはこちらです。
  1. 縦方向・英文と和訳・行間標準・メモ欄あり(解説用など)
  2. 縦方向・英文のみ・行間標準・メモ欄あり(予習用など)
  3. 階段式・英文と和訳・行間極小・メモ欄あり(解説用など)
  4. クローズテスト型・和訳なし・行間標準・メモ欄あり(穴埋めディクテーションなど)
  5. 縦方向・英文と和訳・行間極小・メモ欄なし(答え合わせなど)
  6. 縦方向・和訳のみ・行間標準・メモ欄なし(英作文への導入など)
  7. 縦方向・部分消去型・行間標準・メモ欄あり(学生の予習の負担軽減など)
  8. 縦方向・部分消去型・行間標準・メモ欄あり(学生の予習の負担軽減など)
Phrase Reading Worksheet は専用の作成ツールで作ることができます。
発表用スライドでも書いていますが、Phrase Reading Worksheet については私の博士論文の第Ⅳ部で詳しく述べています。


長い論文ですので、該当箇所だけを読みたいという方のために、第Ⅳ部のみの抜粋をおいておきます。特に実践事例に特化した節、第Ⅳ部第1章第3節(pp.166-173)だけでもお役に立てるかもしれません。ちなみに作成ツールの使い方については第Ⅳ部第1章第2節(pp.145-165)で述べています。

今回はあまり時間がなく、発表に盛り込むことはできなさそうですが、今後、考えて論文にまとめたい方向性としては「授業内ラーニングポートフォリオ」の位置づけです。5年ほど前にポートフォリオの分類で覚え書き程度の論文を書こうかと思ったのですが、用語と実際の使い方(実物)の乖離が様々であり、まとめ切れていません。

もし可能なら発表動画も後日公開します。

発表動画を録画しましたのでこちらでも公開します。

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(2021/1/22 追記)
Proceedings にも投稿しましたが、不採択になってしまいましたので、こちらに掲載しておきます。
(2021/2/8 追記)
不採択ではなく、そもそも応募資格がなかったことに遅ればせながら気づきました…。やらかしました…。

2020年11月1日日曜日

2020.11.3 外国語教員のための無料ソフトを使った音声編集(入門編・初級編)

2020.11.3 にZoomで「外国語教員のための無料ソフトを使った音声編集」という無料オンラインセミナーを実施します。大阪府立大学の清原文代先生にお招きいただきました。

当日は2本立てで、12:00〜13:00が「入門編」、20:00〜21:00が「初級編」となっています。

チケットはこちらからお申し込みください。→ 入門編  初級編

このオンラインセミナーの最終ゴールは(適当に作った非常に怪しげなものですが…笑)こちらです。こういう「ラジオ講座」風の番組も作れるようになります。

当日の配布資料はこちらからダウンロードできます。→ 入門編  初級編

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11/3 19:30 更新:入門編の動画ができました。こちらです。

11/4 16:20 更新:初級編の動画ができました。こちらです。

2020年9月20日日曜日

オンラインによる「コンピュータと言語」の授業実践とその取り組み

2020年9月20日、標記タイトルの内容を e-Learning教育学会 緊急シンポジウム2020 「緊急時の外国語教育」を踏まえた「将来の外国語教育」のあり方を巡って にて口頭発表しました。

こちらのサイトで発表動画もご覧いただけます。

発表概要は以下の通りです。

発表者は非常勤先にて「コンピュータと言語」という半期完結の学部基幹科目(選択必修)を2019年度から担当している。2020年度春学期で3期目となるが、これまで学内の情報処理教室で実施していた授業が3期目にして突然オンライン授業への変更を余儀なくされることになった。当該科目は外国語学部で専攻できる9つの言語を満遍なく扱うという科目内容であったが、オンライン授業化に伴い、多くの困難が生じてしまったことは残念であった。一例を挙げると、学内環境であれば事前に申請することで既にインストールされているソフトウェアを各自のパソコンにインストールする手順などで余計な時間が必要となり、スムーズに授業展開ができなかったということがある。本発表ではこのような「予定していたができなかったこと」の他に「学生が戸惑ったこと」「授業担当者として困ったこと」の3つの観点から紹介する。

発表スライドはこちらにあります。

第2回で扱った、各言語をキーボード入力する方法(IMEのインストール方法)はこちらの記事です。

以下は実際に2020年度春学期に使った教材です。全て強制ダウンロードする形でリンクを貼っています。(一部、著作権等の理由により公開できないファイルがあります。)

第4回・第6回・第9回の資料の転載については学生の了承を得ています。


同様の科目を担当される方々のご参考になればと思います。
(ご利用に際しての許諾申請は不要です。)

2020年6月27日土曜日

英語には冠詞がある。日本語には(   )がある。

2007年度の英文法の授業で冠詞の用法のうちの一部を教える際に『英語には冠詞がある。日本語には(   )がある。』というスライドを作り、その後も何度か使った記憶があるのですが、担当科目変更などの理由で長らくお蔵入りさせてしまうことになりました。折しもオンライン授業ですので、久々に使ってみようかと引っ張り出してきました。

この内容は平成時代に最も売れた本のうちの1冊とされる養老孟司『バカの壁』(2003年、新潮新書)でほんの少しだけ述べられている「衝撃的な内容」を拡張して作っています。

2007年度バージョン(オリジナル)

2007年度バージョンではこのスライド作成へのきっかけになった参考文献をうっかり入れ忘れていました。また、改めて見てみると、確かにインパクトはありますが、ちょっと無理があるような気がしてきました。

そこで「英語の冠詞を間違えるとどんな感じか?」というサブタイトルをつけてみたところ、なかなか良い感じで収まってくれそうです。

2020年度バージョン

もちろん他にも冠詞の用法はあるので、さらに追記したスライドページでは「また別の機会に…」と逃げています。

私の場合は認知言語学の枠組みを応用した説明をするつもりですがね。

どちらも改変自由で公開します。
何かのお役に立てれば幸いです。

2020年4月27日月曜日

パソコンで外国語を入力する方法

非常勤先では「コンピュータと言語」という授業を担当しており、様々な言語を専攻する学生が集まります。そして大学の情報処理教室のパソコンには予めこれらの言語が組み込まれています。

しかし、オンラインでこれをやるためには、各自のパソコンに外国語を入力する方法を組み込むところから始めなければなりません。公式のヘルプもないわけではありませんが、ちょっとわかりにくいので、かなり噛み砕いて説明するスライドを作りました。

例としてフランス語をパソコンに組み込む方法で説明しましたが、どの言語でも方法は同じです。

Windows
macOS

改変自由で公開しますので、ご自由にお使いください。

なお、iOS や Android は、大阪府立大学の清原文代先生のブログを紹介しておきます。こちらは中国語を組み込む方法が説明されています。どの言語でも方法は同じです。

iOS
Android


2020年2月2日日曜日

FLExICT Expo 2019 趣旨説明に代えて - 神谷による50の断想 -

久しぶりのブログ更新です。

2020年2月23日に大阪で主催するイベント、FLExICT Expo 2019 (外国語教育×ICT)の予稿集の冒頭に載せる原稿を一足先にこちらで公開しておきます。

こんな議論は大好物という方、是非ご来場ください!



趣旨説明に代えて -神谷による50の断想- 

FLExICT Expo 2018で示した断想を大幅に改定)


【このイベントの目的について】
1.      「外国語教育」「ICT」「アクティブ・ラーニング」「クラスルーム・ティップス」について幼小中高大の教育と生涯教育をフィールドとする実践事例の収集から何が分かるか?

2.      再現性のある授業研究・授業実践とはどのようなものか?

3.      教育実践者の暗黙的な知見を記述することはできるか?教育活動の見せる化・見える化は可能か?

4.      授業成功のきっかけはどこにあったか?授業失敗のきっかけはどこにあったか?

5.      学習者の成績の「伸び」だけに注目した「研究」にこれまで注力されすぎていなかったか?アンケート分析・統計処理だけで良いのか?

6.      初等中等教育と高等教育の違いこそあれど、教員評価において、教育中心評価・研究中心評価という大きな分断があるように思えてならない。これまで大学の研究者は研究業績を蓄積していくことが仕事だったが、意識改革が必要ではないか?実践事例はこれまで「仕事」としては認められなかった。

【外国語教育の射程範囲について】
7.      いわゆるEdTechのうち、日本国内で行われる外国語教育に特化した、様々なモデルを考えてみたい。ここで言う外国語教育とは、英語以外の言語教育も含む。さらに外国語母語話者に対する日本語教育も当然、射程範囲にある。

8.      主に大学で行われる初習外国語は(学生の発達段階を無視すれば)小・中学校の英語教育と大して変わるところはない。

9.      大学の英語教育においても(専攻言語としての英語を除けば)入学者の多様化に伴い、リメディアル教育の必要性が唱えられている。結局求められているところは似ている。

10.    理想的には「母語話者に対する国語教育」も含めたいところではあるが、リスニング・スピーキングに関する議論の有無という点から、ここでは一旦除外する。
  
【教育現場へのICT導入に関する現状把握】
11.    現在の教育機関に目を向けると、iPad+全学Wifiのような教育機関から、せいぜいスクリーン+プロジェクタ+持ち込みパソコン程度しか使えない教育機関まで、様々である。

12.    デジタル・インフラ(以下Dと略称)100%からアナログ・インフラ(以下Aと略称、教育機関で言えば黒板・チョーク・教卓・教科書・ノート・筆記用具ぐらいに該当か。)100%まで、様々である。

13.    デジタルとアナログをどう組み合わせるか?この方法がこれまであまり検討されていないのではないか?種々のEdTechでの取り組みも含め、これまでは先端的な事例紹介がほとんどだったのではないか?D10割、D7-A3割、D5-A5割、D3-A7割、A10割。

14.    何も教室に設置されていないため、別の保管場所から物品を運んでくるといった手間をかけないと実現できないEdTechもある。

15.    「いつでも使えるICT」「授業の一部でしか使わない(使えない)ICT」「一部の授業でしか使わない(使えない)ICT」のように、状況は様々である。

16.    デジタルデータの汎用性は本当に活かされていると言えるか?

17.    Bring Your Own Device (BYOD)の問題点は何か?BYODではない情報処理教室・CALL教室などの問題点は何か?

18.    校内のICT利用比率はどんな感じか?Wi-fiはどの程度整備されているか?学習者が自由にデジタルデバイスを校内で使えるようになっているのか?授業外・教室外でしかデジタル機器が使えない場合を考えているか?

19.    パケット通信が限定的な状況で本当に学習者は学習アプリを使ってくれるのか?(パケットを消費しない学習アプリの必要性)

20.    いくらデジタル・ネイティブ世代とはいえ、経済的な理由や家庭で禁じられてきた児童・生徒・学生もいる。このようなICT初心者へのサポートは充実しているか?

21.    大学の外国語教員の大多数はデジタルの世界を知らない。しかし入学してくる学生はデジタル・ネイティブ世代。このままでは大学外国語教員による授業は学生から「古いスタイル」と批判されることにもなりかねない。

22.    今後もしも小中高に(特に公立)これまで以上にスマホやタブレット、パソコンが授業現場で使われるようになったら、大学の授業はどう変わる?

23.    外国語教育ではどこまでLMS(Learning Management System)は有効なのか?教材作成にかかる教員の負担は正当に評価されているのか?

【予算との関連について】
24.    教育・研究のための予算がなくても実施可能な教育改善手法とはどういうものか?

25.    大学の外国語教育で特に多い「非常勤講師」の方々には通常、科研費のような外部資金を除くと教育・研究に使える個人裁量予算はない。

26.    全学導入されたタブレット等のデバイスを除けば、学習者には「教科書費用」以外ではICTにかかる費用を負担させることはできない。

27.    ICTによる教育改善は他の外国語教員にも拡大しつつあるか?一部の教員に集中するようなことになっていないか?

28.    教員の働き方改革と絡めると何が見えてくるか?ICTを導入しました、仕事が増えました、ではあまり意味がない。真の意味でのICTによる教育の効率化とは何を目標にすべきか?

29.    設備運用・設備維持にかかるコストはきちんと予算計上されているか?

【最小限のICT利用について】
30.    教員だけがタブレットやパソコンを扱うという形での授業はどう進化するか?

31.    もっとも手軽なIT機器(デジタル教具)は書画カメラ(実物投影機)?ではその次に手軽なIT機器は何?

32.    一見、外国語教育に使えるデジタル教具ではなさそうなものが、使い方次第でデジタル教具になりうることもあるのではないか?例えばメトロノームの利用。

33.    汎用性の高いデジタル教具とはどのようなものか?

34.    そのデジタル教具は教員支援型?それとも学習者支援型?

35.    教育・学習のそれぞれのステージでICTによってさらにもう一味を加えるには?どのようなアプリ・ソフト・ツールを使うことで、どのように拡張ができるか?

36.    それらを用いた活動がどう授業の活性化に繋がるのか?

37.    「アクティブ・ラーニング」や「クラスルーム・ティップス」との関連性はあるか?

【様々な言説について】
38.    「スマホを授業中に利用すること」は賛成?反対?

39.    「調べ学習にスマホ・タブレットを使うべき」という言説には賛成?反対?

40.    ICTによって教育を効率化すべき」という言説には賛成?反対?

41.    ICTの利用は1時間の授業の中で5分だけの活用でもいい」という言説には賛成?反対?

42.    「これまで30分かかった活動を20分に減らすことができ、浮いた時間を別の活動に使えるならばシステムの勝ち」(それがシステムの価値)という言説には賛成?反対?

43.    LMSできっちり教材を作り込む流れは早晩廃れると考えています。既存のシステムはどんなに改良しても帯に短し襷に長し的なところがどうしてもありますからね。現場の教師が Kahoot! の機能が欲しくなったら Kahoot! を使うべきです。」この言説には賛成?反対?

44.    「外国語の運用能力とは瞬発力」という言説には賛成?反対?

45.    「英語なんて『出川イングリッシュ』でいいんですよ」という言説には賛成?反対?

【世間の動向との関連について】
46.    機械翻訳についてどのように考えるか?

47.    例えば経済産業省は「未来の教室 Learning Innovation(https://www.learning-innovation.go.jp)を進めている。既に数多くのEdTechの事例が登録されている。

48.    「未来の教室 Learning Innovation」のようなことを取り入れることは本当の意味での外国語教育の改善に繋がるか?外国語を使える日本語母語話者の育成に繋がるか?

49.    EdTechの対象は誰なのか?教員個人レベルのためのものなのか?同じ教科書を使う先生方が共同で取り組めるレベルなのか?違う教科書でも例文を差し替えたら使えるようなレベルか?そのシステムに教科書以外の文を追加できるようになっているか?

【その他】
50.    高大連携といっても、それは単なる経営戦略上の1つのトピック(学生確保)に留まっていないか?(特に私立学校)



私の「断想」に対する異論反論だけでなく、
皆さんの「断想」も大歓迎します。


今日一日、ICTを媒介とする教育の理想を
みなさんで大いに語りあいましょう!