2013年6月25日火曜日

「外国語教育工具の評価方法をめぐって」(2013.6.15 メソドロジー研究会 口頭発表)

2013年6月15日に関西大学で開催された外国語教育メディア学会関西支部メソドロジー研究会で「外国語教育工具の評価方法をめぐって」というタイトルの口頭発表を行いました。当日はPowerPointのスライドも作らず、Wordファイルで作った発表レジュメをそのまま投影するという手抜きをしたのですが、これは書籍からの引用やスクリーンショットの数が多く、スライド配付資料にするとかえって見にくいかな?という気がしたためです。(単なる言い訳ですが…)

発表資料は以下の2種類(各4ページ、計8ページ)です。当日はこの2種類をA3両面に印刷したものをホチキス止めで配布しました。以下はPDFファイルへのリンクです。
付記1:発表資料で引用しているノールズ(2002:513)の図表イメージは自分でスキャナで読み込んで画像にする手順が面倒でしたので、どなたかの資料で貼られているものをそのまま再利用させていただいています。うっかりどこでいただいたかを控え忘れてしまいました。

付記2:外国語教育開発研究会の第2回研究会は9名の参加者を得て2013.6.22に予定通り開催されました。上記リンクは6月15日時点の情報です。当日の議事録等は近日中に研究会サイト http://fletdev.blogspot.jp/ にて公開します。


当日、主張したかったテーマは以下の3点です。
  • 外国語教育で使われる「道具」の評価方法は「学習者のスコア向上」だけしかないのか。 
  • 教育工学領域の概念で外国語教育メディア研究に取り入れられていない評価手法があるのでは? 
  • ICT活用型外国語教育工具の展望:開発者・原作者・実践者の視点から 
このそれぞれについて、口頭発表では以下のような観点を補いながら説明しました。(詳しくは上記の発表資料をご覧下さい。)
  • 外国語学習を支援できるシステムには学習者のスコア向上には結果が現れないというものもある。このような直接目に見える結果が出ないようなシステムの開発を一層拡大していくためには、評価軸そのものを検討するところから始めなければならない。そして、きちんと評価されないことには開発スキルのある外国語教員が報われないし、広がっていかない。では、その評価方法はどうしたらよいか。 
  • 教育工学といっても非常に多岐にわたるが、今日は次の3つの観点を「つまみ食い」的に用意してきた。「exportableなものでなければならない」、「教えるゴールの3分類」、そして「ペダゴジーとアンドラゴジー」。 
  • exportabilityを高めるための教育工具としての評価はどうあるべきか? 
  • 外国語学習は教えるゴールの3分類(実際には4分類や5分類の文献もあるが、今日は一番ざっくりとわけた3分類のものを引用)のうち、どのスキルを向上させるものか。また、どのスキルを伸ばすための教育工具なのか。これらを混同していないか。 
  • ペダゴジーとアンドラゴジーのどちらに焦点をあてた教育工具なのか?仮に学習者を大学生に限定するとしたら、そもそもこの2つのうち、どちらが大学生に向いているのか。 
  • 「従来の方法よりも優れている」ことをどのように記述するか?学習者のスコア向上以外の観点には例えば「つまづきそうなところをそっと助ける仕組み」や「教室外学習時間を増やすための仕組み」がある。また、教育者への支援策として「教材作成の省力化ができるシステム」や「教材の多目的利用を可能にするシステム」も考えられる。 
  • 目新しさや物珍しさ以外の観点はあるのか。また、高価な(高度な)設備が必要な教育は先端的だが、見方を変えれば「exportabilityが低い」ことにならないのか? 
  • メディア単体の効果ではなく教授過程全体を捉える必要性。 
  • 実践事例の価値はどこにあるのか。ティーチングポートフォリオや授業学研究の方法論はどうあるべきか。また、研究と教育実践の両面を一度に高めることは可能か? 
そして、私自身が関与した具体的な事例紹介として以下の3つを紹介しました。(「教室外学習時間を増やすための仕組み」はe-learningやモバイル機器の利用など、いろいろ考えられますので、特に触れませんでした。)
この発表は私自身が企画している外国語教育工具開発研究会の方向性とも連動していますので、2013年6月22日に開催予定の告知用資料を参照しながら、特に冒頭でも述べた「開発者・原作者・実践者」の3つの役割についてふれ、開発者と実践者は評価されることがあるにしても、原作者(ICTツールを使ったらこんな事ができるんじゃないかと思っているけれども開発はできないという外国語教育関係者)も開発者とコラボすることでこれまでにない新しい学習支援ツール等を作っていくことはできるだろうし評価されるべき、ということについて話して終わりました。

うっかり時間配分を間違えて発表時間を超過して話してしまったこともあり、質疑応答では総合司会の北海学園大学の浦野研先生による1件のみしか質問をお受けできませんでした。ご質問の趣旨は「授業準備の効率化は意義のあることだと思う。あとは学習者の英語力向上も。この2つの切り口だけで、教育工具の評価はできるんじゃないかな。他の視点も必要?」(Twitterで書かれている内容)でした。とっさにきちんとお答えすることができなかったのですが、「授業準備の効率化」に関する研究を発表・報告しても「では、学生のスコアはどう伸びたのか?」という的外れな質問をされることがある、という点をお話ししました。これについては同意していただけたようです。

実際にはこれら2つの切り口以外にも発表中で触れたように「つまづきそうなところをそっと助ける仕組み」もあると思います。これについては上記リンク先のその先の資料の中で詳しく書いていますが、「外国語学習にイライラさせない、途中断念させない仕組み」も今後の外国語教育工学の中で重要になってくるのではないかと考えています。システム化するかどうかは別にしても、かゆいところに手が届く仕組みとでも言えるでしょうか。

でもこれはそう簡単には実現できないでしょうね。私自身、この研究テーマはライフワークの一つにしたいと考えています。

当日、ご来聴いただいた方々が私の発表中にTwitter上でいろいろつぶやいて下さいました。その中から一部のご意見を紹介します。
  • 複数のメディアを組み合わせて使う。 研究的妥当性と教育実践的妥当性の両立は可能? 
  • リサーチクエスチョンをどう立てるかという話につながりますね。 
  • 授業準備の「効率化」が要定義なのと、どういうプロセスを辿らせたり捨象したりしてるか…まとまりませんが、もうちょいある気がします。 
  • 教員の負担軽減 は大事!(で、学生の力が伸びたの?はまた別の話ですね。) 
  • そもそも何を目的として作っているのかという観点が大事なんじゃないのかな。 
今回の発表では副産物(?)として、Phrase Reading Worksheet作成ツールに関心を持って下さり、実際に授業でも使って下さる方が新たに見つかりました。ダウンロードサイトへの直リンクはこちらです。(上記のリンク先からもたどることができます。)開発者として大変有り難いことです!